武器の孔

「SDガンダム風」にデフォルメした某古墳出土剣

 4世紀末~5世紀初頭、松木武彦氏の編年でいうところの「古墳時代6期」の武装システムに含まれていた鉄剣である(松木武彦、2007『日本列島の戦争と初期国家形成』東京大学出版会)。愛知県の某古墳から出土している(ただし未公開資料ゆえ、ホンモノより剣身の丈を短くして「SDガンダム」風に模式化してある)。ただし茎部はデフォルメしていない。にもかかわらずたいそう短い。刃関(はまち)孔が片側にしかない。弥生時代から、刃関(はまち)双孔の剣はあるが、片側だけというのは他にあるのだろうか。

「SDガンダム風」にデフォルメした吾妻坂古墳出土剣

 この「古墳時代6期」というのは、日本列島に馬具と乗馬の風習が入ってくる直前の時期である。このため、馬具を主な研究対象としている私にとって、ついおろそかにしてしまいがちな時期だ。どうしても馬具の出現した時期以降に目がいってしまうのである。本当なら、むしろよく見ておかねばならないはずなんだが(仮に騎馬民族の日本征服が事実なら、まさに「その前夜」に当るわけでもあるからして)。

 時期が少なくとも一段階後、すでに馬具や定型化した須恵器TK73が出現した時期以降に相当する、神奈川県厚木市の吾妻坂古墳からも刃関(はまち)双孔の剣が出土している。吾妻坂古墳からは茎部の長い新しい様相の鉄鏃も出土していて、年代的には幅がある。馬具は出土していない。

 類例をご存知の方がおられたら、ご教示いただけると幸いである