元気で長生きの秘訣は発掘調査?!

 福島県立医大時代の同級生(というのもおこがましい、ドロップアウトして文転した私以外は皆立派な医者になった)の一人、東京都立大学(と来年4月にその名称が戻る)名誉教授の星旦二先生は、公衆衛生学の立場から「元気で長生き」の秘訣を研究しておられる。少し前、しばらくぶりに、東京都の福祉保健局に勤務していた同じ福島時代の友人を交えて新宿で飲んだ折、一冊の著書を頂戴した。題して『ピンピンコロリの法則―「お出かけ好き」は元気の秘訣』(ワニブックスPLUS新書、2014年刊)。

 「ピンピンコロリ」ということばの語感はあまり好きではないが、要は健康を保ちつつ長生きし、死ぬ時は寝たきりにならず、あっさり昇天するにはどんな生活を送れば良いか、元気で、介護不要で、自立して生活できる期間を延ばすにはどうしたら良いか、ということを、大変わかりやすくまとめた本である。飲みながら教わった秘訣も交えて披露すると次のような具合だ。

  • おしゃれと買い物が大好きだ。
  • 医者が嫌いだ。
  • 友達がたくさんいる(社会的なネットワークがある)。
  • 酒は毎日飲む。
  • ちょっと小太り体型だ。
  • 「自分は健康だ」と思っている。
  • 窓の外に樹木が見える。
  • 家に階段があって苦労している。
  • 犬や猫などのペットを飼っている。
  • コレステロールが高め。
  • 働く場所、働く意欲を持っている。
  • ボランティア活動を続けている。
  • 筋肉を維持する運動、増やす運動をする。
  • 病は気から、老化も気から、寿命も気から。
  • ……など、など……

 飲みながら話していて、「それって発掘調査の仕事そのものじゃないか」と思ったのであった。毎日、野外に出て頭と体を使って、多くの仲間とコミュニケーションを取りながら汗を流して仕事する。帰ってきたら、楽しく飲んで寝る。雨の日は本を読む。休みの日は、研究会に出たり、古本屋をめぐり、帰りに友達と会って一杯ひっかける。理想的な「ピンピンコロリの生活」ではないか。両ドクターも、その通りだと認めてくれた。

発掘調査という仕事

 ところが、文科省の統計を見ると、役所をリタイアしたあと発掘調査員の仕事を続けない職員のほうがはるかに多い。いっぽうで現在、即戦力の発掘調査員の数が足りず、次世代の戦力を育てる仕組みもうまく機能せず、埋蔵文化財の記録保存という社会システムが危機にさらされているという。二重にもったいない話である。役所を退職したあとも、発掘調査員としての仕事を続ける人々が増えれば、調査員の不足も、次世代の教育も、解決できるではないか。しかも、「ピンピンコロリの生活」を実践できるのである。

 万国の考古爺婆よ、野に出て発掘せよ!