日本型戦闘教義 / doctrine

蒙古襲来絵詞

 日本軍の「伝統」について、その著作の中で松木武彦氏が興味深い指摘をされている。それによると、日本の軍隊の頑迷さや精神的な保守性は、古墳時代以来培われてきた日本型軍事的原型によって導かれたものなのだそうだ。

 軍事用語を使って言いかえると、日本列島の戦士集団は、古墳時代から現代まで、一貫して日本型戦闘ドクトリン(教義)を維持してきたということになろうか。

 たとえば、古墳時代の日本では、同時代の朝鮮半島で要塞や山城が発達するのに対して、それが全く見られない。こうした攻撃偏重の軍事力使用という戦術体系が、近代に至るまで「倭人」の戦争のスタイルや観念を規定し続けたという。

 実はこのような考えは、かの後藤守一先生の考えと殆ど変わらない。違うのは、後藤先生がこうした「日本軍の伝統」を「素晴らしい!」と頭から肯定したのに対し、松木氏が「最低」と頭から否定している点である。同じ戦争ドクトリンを、戦前戦中の価値観で捉えるか、「戦後」の価値観で捉えるか、が評価の分かれ目になっている。

 さて、問題は戦前の日本軍の「肉を切らせて骨を断つ」という戦闘ドクトリンが、果たして本当に古墳時代から連綿として引き継がれてきたのか、という点である。いずれ改めて議論してみたい。

doctrine : Fundamental principles by which the military forces or elements thereof guide their actions in support of national objetives. It is authoritative but requires judgment in application.

U.S.Department of Defense “Dictionary of Military Terms”,1999

参考文献

松木武彦(2001年)『人はなぜ戦うのか』講談社